ためらいがちな真珠あるいは虹の橋のタラ

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②あきらめっこ

私はアイスを食べるのが早い。
なぜなら、アイスを舐めるのではなく齧るからである。

生まれてから11歳まで私の家はアイスクリーム工場の中にあった。
両親が勤める工場の社宅で、家のドアを開けると暗い廊下を隔てて工場があり、
ベルトコンベアーに乗って運ばれていくアイスを毎日飽きもせず眺めていた。
不思議と製造過程は記憶になく、アイスが出来上がりベルトコンベアーの上に乗せられて運ばれ、
段ボールに入れられる場面しか印象にないのである。
工場に遊びに行くと、働いているおばちゃんの誰かが「形の悪いのができたから」と、先の欠けたアイスをくれる。早く食べるともう1本もらえる。だから舐めずに齧るのが少しでも早くアイスを食べるテクニックだった。

アイスクリーム工場なので当然ながら工場の中には冷凍庫がある。
大人が立ったまま入っていける広さ15畳ほどの巨大な冷凍庫である。
9歳の夏の日、私は普段着のシュミーズ姿のままいつものように工場へ
アイスのおこぼれを期待して入っていった。
何が理由だったのか今となっては記憶にないが、工場で働く母にひどく叱られ、
シュミーズ姿のまま私はその巨大な冷凍庫に放り込まれ外から鍵をかけられてしまった。

電気は点いているものの密閉されてしんと静まり返った庫内に一人でいると
幼いながらも死の恐怖がわいてきたのを憶えている。
しかし私は扉を叩いて「ごめんなさい~!」も言わなければ
「助けて~!」と叫ぶこともしなかった。
静かに涙を流しながら「このまま死んでしまうのか・・・」と、ただ立ち尽くしているだけ。

見るに見かねて工場のおばちゃんの一人が扉を開けてくれ命拾いをしたが、
大人になってからこの話を母にすると、「憶えていない」という。
そして『あんたは小さいころからあきらめの早い子だった。叩いても逃げない。
「なぜ逃げない?」と聞くと「大人にはかなわないから」と淡々と答えるいやな子だった』
と笑いながら付け加えた。

まったくそのとおり。私は9歳にして悟っていたのだ。
大人に抵抗しても無駄なこと。
無駄なことに全力を注ぐことはさらに無駄・・・と。あ~可愛くない。
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by anuenue_tara | 2011-09-25 18:43 | えっせい

15歳

今日9月20日は、タラちゃんの15歳の誕生日。

毎年ケーキやプレゼントを買って祝ったものだ。

今年は・・・肝心のタラがいない。

家の中のどこにもタラの気配がない・・・。


昨日、「ライフ」という映画を観た。

地球上には500万種以上の生物がいて、みな一生懸命生きている。

命をつなぐために・・・。

小指の先ほどのカエルやアリちゃんからクジラまで

いろいろな動物の生き様を見せられると

人間だからって偉くも何ともない、と思える。

単なる地球上の生物の1種というだけ。

「人命は地球より重い」といった政治家がいたけど、

アリの命も、犬の命も、人間の命も、地球で生かされているちっぽけな命。

ただただ、全うするのが務め。
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by anuenue_tara | 2011-09-20 22:10 | タラ星ものがたり

宮城ライブ

震災からちょうど半年となる9月11日、
桑田佳祐「宮城ライブ~明日へのマーチ」へ行ってきた。

チケットぴあに3時間並んでやっとのことでチケットをGETしたライブ。

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時間ぎりぎりで、仙台空港やら仙台駅東口やらを必死にダッシュして
やっとたどりつた宮城セキスイハイムスーパーアリーナ。
この会場、震災被害のご遺体が安置されていた場所だったとか・・・
亡くなられた方たちの魂とともに、佳ちゃんのライブを楽しみたいと思い参加したのだ。

ライブの初めに全員で黙とう。
すでにこの時点で涙もろい私はグズグズに・・。
もし私があの津波で命を落としていたとしたらら、このライブをきっと喜んでいると思うが、
はたして会場に安置されていた方々はどう思うのだろう?
喜んでくれただろうか?

佳ちゃんのつくる曲の歌詞に「とめどなく涙が流れる」というフレーズが
よく出てくると思うが、今回初めてとめどない涙というものを流した。
泣こうと思っていないのに涙が流れる・・・
佳ちゃんは湿っぽい話はほとんどしないのに、私の胸は感動でいっぱい。
私の後ろの席の女性は何度も「あいがとう~!」と叫んでいた。
ほんとうに私もそう思う。

あんなに素晴らしいライブをありがとう~。
みんな元気になって帰って行ったと思う。

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by anuenue_tara | 2011-09-19 18:19 | サザンオールスターズ

町屋アートチャリティ

まちなみアートアクション篠山という
チャリティイベントに行ってきた。

昨年のちょうど今頃、まちなみアートフェスティバルというのを見て
よかったので今年ものぞいてみた。写真は一緒に行った友人が撮影。

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こんなさりげない中庭がある家・・・懐かしいような・・・

作品はこんな感じで
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なかでも私のお気に入りは
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鉄の造形作家 近藤明さんのこの作品。懐かしい形の電灯が可愛い!

そして、これは磁石がデザインされているぐい飲み
磁石の針が東北を指しているというのが気に入って2個購入。
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ところどころの空間は購入されたあとの空間をそのままに。

まちなみアートは2年に1回のペースで開かれるが、
今回は東日本大震災復興支援の臨時版とのこと。
東北の作家さんたちの作品も展示されていたようだが、ちょっとわからず・・残念。
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by anuenue_tara | 2011-09-17 21:51

いぬの写真展

神戸大丸で開催中の「いぬの写真展」に行ってみた。

岩合光昭さんという動物写真家が40年にわたって撮った世界中の「いぬ」。
日本の北海道、秋田、四国から、オーストラリア、タンザニアやチベットなど
世界中の普通のいぬたち・・・。

帰りの車のなかでヒロが言った。
「あの会場の出口で犬を売っていたら、買ってしまうやろなぁ・・」

犬を見ると思わず顔がほころぶ・・犬は素晴らしい。
いつかまた犬を飼いたいという気持ちが・・・固まりかけている。

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どれも愛すべき犬たち・・・その中でもお気に入りはこの写真。
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岩合さんがオーストラリアに住んでいた時に飼っていた「クロ」。
タラと同じく背中に哀愁が・・・(笑)

写真集を買うとサインをしてくれた。犬の絵も・・・
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性懲りもなく黒ラブグッズも買ってしまった053.gif

猫好きの方は、9月14日~26日まで 
大丸 心斎橋店 「岩合光昭写真展 ねこ」へどうぞ。
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by anuenue_tara | 2011-09-04 21:54 | タラ星ものがたり

① トイレのジャングル

私は、生まれてから小学5年生までの日々を高知県中村市という小さな町で過ごした。
現在の四万十市である。
日本最後の清流と言われて久しい「四万十川」の河口にある。

今からおよそ500年ほど前、
関白一条教房公が応仁の乱から逃れてこの地にたどりつき、京都に模して造ったと言われ、
「土佐の小京都」と呼ばれる、人口4万人に満たない小さな城下町である。

当時、父はM乳業の下請け会社でアイスクリーム部門を担当する工場の責任者として働いていて、
私たち家族の住まいもその工場の中にあった。
工場の倉庫の一角にある社宅は二間きりの部屋で一日中陽が差さず、
昭和三〇年代の地方都市では珍しくない貧しい暮らし向きだった。
いつかは庭のある一軒家で暮らしたいと幼いながらも私は夢見ていた。

小学四年生の秋、何やら両親の間で「大人の事情」があったらしく、
私たち家族は急に町の中心地にあった工場から、
お城近くの丸の内という地区に引っ越しをすることになった。

新たに住む家は中村城跡の為松公園西側にあるこじんまりとした住宅地で、
道路から一番奥まったどん突きにあった。
塀のないだだ広い庭には、桜やグミ・ビワの木などが植えられていて、
家庭菜園ができる程度の畑もあった。
陽も少し短くなりつつあった引っ越しのその日、
畑の脇には真っ赤な彼岸花が揺れていたのを鮮やかに思い出す。

新しい家はかなり古く、台所は土間になっていて、
その横にある板張りの茶の間には、
薬箪笥のような小さな引き出しがたくさんついた家具が置かれていた。
部屋は五つもあり、周り廊下にもなっている縁側が明るい日差しをたっぷり受け入れていて、
暗い工場の中で育った私たち姉妹は心が躍った。

ところが、衝撃的な事実があきらかになったのは、
引っ越しの荷物をあらかた運び込み、誰かがトイレに立ったその時である。

家の北側にある扉を開けると、窓のない廊下の先に当時はまだ水洗ではなく、
いわゆる「ぽっとん式」のトイレがあった。
初めてそのトイレへと続く扉を開けたのが、家族の誰だったのか記憶にはないが、
悲鳴のような声に弾かれるように全員が扉の向こうを覗き、そして感嘆の声を上げた。

なんと、便器の真ん中から大きな大きな1本の竹がニョッキリ生え、
繁った緑色の笹が何重にもとぐろを巻いてトイレ全体と廊下を占領していたのである。
トイレがジャングルに飲み込まれているような、それはそれは恐ろしい光景で、
小心者だった私は、こんな恐ろしいトイレに毎日入らなければならないわが身を考えると
背筋が凍りつき、泣きそうになった。

もちろんそのままではトイレが使えないので、
両親がなんとか使用に支障のない長さに切ってくれたが、
小心かつ想像力のたくましかった私は、トイレに行くたびに、
タケノコがヌーッと伸びてきそうで怖くてたまらなかった。

トイレの竹が原因ではないと思うが、私たち家族はその家に1年ほどで別れを告げ、
再び工場の近くに引っ越すことになった。
両親の間にあった「大人の事情」が解決したのかもしれない。

それから私たち家族は大阪に移り住み、結婚して現在に至るまで
何度か引っ越しを繰り返したが、
新居のトイレのドアを初めて開けるときには
緊張感とともに不思議なワクワク感を覚えた。
竹がトグロを巻いているのはこりごりだが、もしかしたら
見たこともないような美しい世界が広がっているかもしれない・・・
と想像するからである。
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by anuenue_tara | 2011-09-04 21:24 | えっせい