ためらいがちな真珠あるいは虹の橋のタラ

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「海をゆく者」

アイルランドの演劇界をリードする劇作家コナー・マクファーソンという人の作品で、
2006年にロンドンで初演、ローレンス・オリビエ賞にノミネート、
2007年のブロードウェイでもトニー賞にノミネート・・という傑作ストレートプレイ「海をゆく者」。

今回の日本での上演は、栗山民也演出、
出演は 小日向文世・吉田鋼太郎・浅野和之・大谷亮介・平田満
という実力派「百戦錬磨の男優5人」。1
1月に東京で初演、今週の大阪公演の後は新潟と名古屋で上演される。

演じる5人の俳優・・・
小日向文世と平田満以外の3人のかたは名前だけではパッと顔が浮かばないが、
パンフレットを見ると「あ~~」と納得の、テレビや映画、舞台で活躍されている方達。

事前に手にしたチラシには、
イヴの夜、毎年恒例のポーカーゲーム、つり上げられたレート、降りられないゲーム、
果たして神は誰に微笑むのか・・・とある。
緊張した場面が続く心理劇・・を想像していたが、意外にもテンポ良く進むストーリーと、
個性的な登場人物たちに引き込まれていく。

舞台はアイルランド・ダブリン北部の海沿いの町。
古びた家に若くない兄弟が二人で暮らしている。
兄は最近、目が不自由になり、弟が兄の世話をするために戻ってきているのだ。
兄も弟も大酒飲み。特に酒癖の悪い弟は(過去に何かあったのか)酒を断っている。
クリスマスの夜、兄弟のポーカー仲間がある男を連れて来る。
その男は弟が最も会いたくない、会ってはいけない・・・弟の過去を知っている男だった。
そして男達のポーカーが始まる。

朝から大酒を飲む盲目の兄(吉田鋼太郎)。
酒癖が悪いため禁酒中の弟(平田満)。
妻のお尻に敷かれている気の弱い友人(浅野和之)。
弟の元の恋人と付き合っている男(大谷亮介)と、
その男が連れてきた見知らぬ男(小日向文世・実は弟の過去を知っている)。

5人が5人とも酔っぱらっている(平田満演じる弟は後半に禁酒を破りガブガブ飲んでしまう)
という、もしかしたら収集不可能な展開になるのでは~という感じなのだが、
5人とも上手い!ので、どうしようもない酔っぱらいなんだけれども、
その胸の奥には人生のモヤモヤがいっぱい詰まっている・・という、
情けないような、せつないような、可笑しいような、愛おしいような不思議な気持ちになる。

とにかく台詞がたくさんあって、
特に兄役の吉田鋼太郎と見知らぬ男役の小日向文世はがんがん喋る。
兄は酔っぱらって支離滅裂なことをわめき、
見知らぬ男は酔っぱらいながらも紳士的に・・
でも弟と二人きりになると悪魔のように声も表情も変わるので不気味。

イブの夜に、酔っぱらいのおじさん達がポーカーを始める。
掛け金がどんどん大きくなって・・・結末は・・・
お芝居が終わって開場を後にするエスカレーターで聞こえた女性の
「なんだかハートフルな舞台だったね」という言葉が印象的だった。
私も物語の展開はともかく、「愛すべき酔っぱらい達のクリスマスイブ」
を楽しませてもらったという気持ちになり、
けっこう暗いストーリーや設定なのに爽快な気持ちで開場を後にした。

そして、今年の春に観た「ドライビング・ミス・デイジー」に通じる
「これぞ演劇!」というハイレベルな演技に魅了された。
出ているのは酔っぱらいばかりながら、上質の舞台だと思う。

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by anuenue_tara | 2009-12-12 15:22 | IMPRESSION☆感動