ためらいがちな真珠あるいは虹の橋のタラ

④ お薦め本 「猫鳴り」 あらすじ

やとわれ大工の藤治と信枝夫婦の家に生まれたての子猫が迷い込んでくる。
結婚一七年目にして初めて身ごもった子を流産した直後で心のすさんでいた信枝は、
その子猫を新聞紙に包んで近くの畑に捨てに行く。
だが翌朝再び子猫は庭に現れる。
今度は藤治が少し離れた林に捨てに行く。
その次の日、霧雨の朝にまたしても子猫が戸口のすぐ外にいた。
怪我をして、全身泥まみれになりながら林の向こうから這って来たであろう子猫、
まるで二人のもとに誰かから授けられたかのように
何度でも帰ってくるその姿に信枝はたじろぐ。
しかし、容赦なく信枝は三たび子猫を捨てに行く。
今度はもっともっと遠くの森の中へ。

ところが、その子猫を夫婦の家に捨てたのは
見知らぬ小学生の女の子だったことが明らかになり、
行きがかり上、夫婦は猫を飼う決心をする。流れた子供を忘れないためにも。

モンと名付けられたその牡の子猫がやってきてから十数年が過ぎた。
すでに信枝は病に倒れ他界し、残された藤治とモンは穏やかに暮らしている。
時々、藤治が首を撫で全身をさすってやると、モンは喉をグルグルと鳴らし始める。
それを藤治は「猫鳴り」と呼んでいた。
最近はその猫鳴りの最中に涎を垂らすこともあるモンは、
いつの間にか牙が抜け、肉の落ちた背中に老いが見え始める。
二十年が過ぎた頃、モンは体調を崩し、食べ物はおろか水さえも口にしなくなった。
その姿は、ゆっくりと「死」を受け入れているかのように見え、
漠然と「自分の死」を恐れていた藤治に
「モンが行けるのなら俺だってちゃんと行けるだろう」と思わせた。 
1か月以上飲まず食わずの状態でモンは徐々に藤治から遠ざかっていき、
ついにある夜明けに息を引き取る。
見事な別れを果たしきった猫を、藤治は褒めてやりたい気持ちになる。
自分に手本を示すかのように逝ってしまった猫を・・・。
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by anuenue_tara | 2011-10-22 23:50 | えっせい
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