ためらいがちな真珠あるいは虹の橋のタラ

ジョン・ガブリエルと呼ばれた男

兵庫県立芸術文化センターで上演された「ジョン・ガブリエルと呼ばれた男」
を観てきた。
6日の土曜日2時からの公演。
出演:主人公 ジョン・ガブリエル・ボルクマン 仲代達矢
       その妻 グンヒル        大空真弓
       妻の双子の妹 エルラ      十朱幸代
       ボルクマンの友人        米倉まさかね

登場人物はこの4人だけ・・というとてもシンプルなお芝居。
しかしそれぞれの個性は強烈で、とっても濃厚なお芝居だった。

原作:イプセン
ノルウェーの劇作家 シェイクスピア以後、世界で最も盛んに上演されている劇作家。
誰でも聞いたことのある代表作として「人形の家」がある。
ある出来事から 夫から一人の対等な人間として見て貰えていない事実に気づき
家を出るノラという女性が主人公の物語 
フェミニズムを語るときによく引き合いに出される「女性の目覚め」を扱った作品。
日本でも、新劇と呼ばれるジャンルではこのイプセンの作品がよく上演されている
「社会派」劇作家の代表といわれているらしい。

演出:栗山民也
お芝居を見るとき、出演者に気を取られて、演出家の名前にはあまり目がいかない。
・・が、この栗山民也という演出家の名前はよく目にする。
現在、日本で最も活躍している演出家のひとりではないだろうか。
小劇場から大劇場まで、ジャンルもストレートプレイからミュージカルまで
幅広く活躍、演劇賞もたくさん受賞している。

物語は・・・
炭坑夫を父に持つたたき上げの実業家ボルクマンと、
名家の生まれで美貌と才気に恵まれたエルラが出会い恋に落ちるのだが、
結婚も間近という時に、突然ボルクマンはエルラの双子の姉グンヒルと結婚してしまう。

その裏にはボルクマンとヒルケンという弁護士の取引があったのだ。
エルラを手に入れたかったヒルケンは、銀行の頭取という座を餌に
ボルクマンにエルラをあきらめさせ、その姉グンヒルと結婚させる。
ボルクマンから捨てられたエルラは、しかしヒルケンの求婚には応じない。
業を煮やしたヒルケンは腹いせにボルクマンを告発し頭取の座から引きずり下ろし、
ボルクマンは服役する。

ボルクマンが服役している間、
エルラはボルクマンとグンヒルの間に出来た息子エルハルトを引き取り育てる。
エルラはボルクマンとヒルケンとの間の裏取引は知らないわけで、
自分の姉と突然結婚した恋人ボルクマンへの憎しみより、
恋人の面影のあるエルハルトを育てることで
実らなかった愛を再び手に入れたような気になったのだろう。

そして何年かが過ぎ、ボルクマンが出所、エルハルトは実の母親グンヒルに再び引き取られ、
屋敷の2階にボルクマン、そして1階にグンヒルとエルハルトが住むという、
家族でありながらグンヒルの強い憎しみによって夫婦が一切接触せず、
ひとつ屋根の下で暮らして8年の月日が過ぎていった。

さて・・・舞台の幕が上がるのは、そこからなのだ。

赤と黒の重々しいコントラストで表された、グンヒルの居間。
幕が上がると上手に姉のグンヒルが苦々しく強い憎しみを表した顔で立っている。
そして中央の入り口には冷静な表情の妹エルラが立っている。

25年ほど前にボルクマンという男を取り合ったこの双子の姉妹が、
今度はその愛する男の息子エルハルト(もう20歳になっている)をめぐって争っていく。
エルラは病気になりふたたびエルハルトと暮らしたいと思っているのだ。

大空真弓の演じる姉グンヒル、全ての言葉に刺があり、ものすごい貫禄。
そして、強いけれど、かつて二人の男から愛された魅力ある女性エルラの十朱幸代には
女性らしさがたっぷりあった。
この二人の言葉のバトルに観客は冒頭から強い愛と憎しみを感じさせられる。

そして場面が変わって2階で繰り広げられる、主人公ボルクマンと友人フォルダルの会話。
こちらは夢もありユーモアもあり、少しホッとさせられる。

この二つの場面から先ほどの過去の話がわかってくるのだが、
最後の場面では、姉妹が取り合った息子エルハルトは他の女性に奪われ、
かつて奪い合った男ボルクマンが死に、
もう奪い合うものがなくなった姉妹グンヒルとエルラは・・・・なんと・・
・仲直りをして手を繋いで・・幕が降りる・・・そんなお話。

恐い恐い大空真弓、強くて優しい十朱幸代、
奈落の底に落ちてもまた這い上がりたいという夢を持つボルクマン、
そして深い寂しさを感じながらボルクマンに寄り添う癒し系のフォルダル・・・
演技力では申し分のない4人の俳優達。お腹にずっしりこたえるお芝居。

楽しいエンターテイメント系のお芝居やミュージカルもいいけれど、
こんな重い新劇も見ごたえという部分では負けていない~。

良いお芝居だった。

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by anuenue_tara | 2010-03-07 16:54 | IMPRESSION☆感動
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