ためらいがちな真珠あるいは虹の橋のタラ

劇団☆新感線「蛮幽鬼」

昔々、鳳来という国から、おとつのからまろ・きのうきな・きょうがねしらべ、
そして、伊達土門という4人の若者が、カダという国の文化や宗教などを学びに
海を渡って留学。
それは自分たちの国「鳳来国」の国作りのための勉強。
何年かの留学期間を終え、まもなく帰国という流れ星の見事な夜、
留学生の一人「しらべ」が何者かに殺されてしまう
(「しらべ」というのは土門の恋人美古都の兄)。
からまろとうきなの嘘の証言で、土門が犯人に仕立て上げられ、監獄島に流されてしまう。

冒頭のシーンから、からまろとうきなに大志はなく、
しらべと土門には「未来の鳳来国」を担っていくという、
大きな夢や覚悟があることが伝わってくる。

緞帳(幕)、開幕までは「蛮憂記」と書かれているが、
このプロローグ部分のシーンが終わると「蛮幽鬼」という字に変わる。
上川隆也演じる土門の「私はやっていない」という叫びの後、
題字が変わることで、主人公の悔しさや恨みが観客の心に刻み込まれる。

10年の月日が過ぎ、監獄島の囚人サジという男の導きで脱獄を果たした土門は、
サジや囚人仲間のペナンという女性と共に再び海を渡り、
自分を陥れた者達への復讐のため、祖国鳳来国に帰国。

鳳来国では、土門を陥れたからまろとうきなの二人が国の権力者となり、
恋人であった美古都は国の王「大君」の妃になっていた。
土門は自分を陥れた友人達が権力を握り、元の恋人は他の人と結婚していたという事実に、
大きな衝撃を受け、復讐をあらためて強く誓う。

からまろとうきなの二人が説く「蛮教」という宗教に対して
「蛮しん教」の教主として土門は都に現れ、そしていよいよ復讐劇が始まるのだが、
どうやら土門を陥れたのは、からまろとうきなだけの仕業ではなく、影で操った人物がいる・・
そしてその人物もなにか得体の知れない大きな陰謀に繰られていた・・
というドラマティック過ぎるストーリー。


アレクサンドル・デュマの「モンテ・クリスト伯」をベースに、
中島かずき作、いのうえひでのり演出という「蛮幽鬼」。
このコンビの特徴は「少年漫画的冒険活劇」。
それにプラスして人間ドラマが織り交ぜられていて、
ただ面白いだけではない「何か」を心に残してくれる。

未来ある留学生達の会話のあとに突然起こった殺人、
そしておどろおどろしい監獄島の場面、鳳来国の堕落したありさま、
復讐心のすさまじさ、「このさきどうなるのだろう~」という
観客の緊張を時々溶かしてくれる新感線お得意の「笑い」、
殺陣の迫力と美しさ、見ごたえたっぷりだった。

回り舞台を生かし切った場面転換。合計何回転したの~?と思うほど
場面転換のたびに舞台がクルクル回るのでスピード感と連続感がありる。
そして客席にもどんどん出演者が降りてきて踊ったり歌ったり走ったり。

そして笑い・・重いテーマを新感線独特のこってり笑いで時々ほぐしてくれる。
アドリブもあり、私が観た日はちょうど上演中にあの「市橋容疑者」が逮捕され、
2幕目の冒頭で 悪役の橋本じゅんが「あの男も南港で捕まったし~」なんて
アドリブを入れていた。20分の幕間にニュース見てたのね~。(余裕~)

あとは殺陣(チャンバラ)。堺雅人はずーっと笑顔でひらひらと人を殺していくし、
上川隆也の殺陣は力強く格好いい!
そして最高なのが早乙女太一くん。美しすぎる刀さばき。
観ていてうっとりさせられる優雅な殺陣だった。
弱冠18歳ということだが、その美しさは小さい頃からの舞台で磨き上げられた彼の宝物。

その殺陣、いつものように斬り合うシーンが長すぎるようにも感じるが、
逆にその長すぎる殺し合いが観客に「争いごとのむなしさ」を伝えているのかもしれない。

そして私自身は、昔愛し合っていた土門と美古都が対決するシーンが心に残った。
冒頭の事件がなければ夫婦となり穏やかな家庭を築き、
国づくりに協力し合えたであろう二人が敵対し、最後の最後に・・・
このあとは書けないが、なぜか久々に胸が高鳴りせつない気持ちになった。

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by anuenue_tara | 2009-11-10 23:00 | IMPRESSION☆感動
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